運命はきまぐれで

・飛翔がポストマンの世界に来る直前の話です。
  ずーっと長い話のラストに位置するものを断片的に書いたので状況はわからないと思います。
・登場人物
  飛翔:まあいうまでもなく風波飛翔。
  桔梗:カーミンという風の竜が飛翔の呪いにかかって
   人間にされた状態。
  マコト:飛翔の義理のお父さん。不正義教教祖。
あとはまあ雰囲気で感じ取ってくれると嬉しいです。




「ただいまー、飛翔」
いつもどおりの返事が返ってくると思っていた。
今日もあいつにからかわれながらも一日が終わると思っていた。
しかし、返答はない。
「…いないのか?」
軽く1階を見て回ったが、あの黒尽くめのお調子者の姿はない。
2階にのぼり、彼の部屋のドアをノックする。
返答はない。
ドアノブに手をかけると、あっけなく開いた。
なにかの罠ではないかと疑いたくなるくらいにあっけなく。
あいつならやりかねん。

部屋の中に潜入する。
すぐに目に付いたのは、机の上の薄い水色の紙。
机まで歩み寄り、手にとってみれば、封筒だった。
“カーミンへ”
俺宛の手紙。
しかし背中になにか冷たいものが走る。
あいつが俺の本名を呼んだことなど無かったからだ。
封を開けた。

『カーミンへ。
 いままでありがとう。
 ボクと対等に付き合ってくれたのはキミがはじめてだったよ。

 追伸
 ボクのかけた呪いは直に解けるから安心していいよ』

「なんだよ…これ…」
飛翔は俺を女に変える呪いをかけた迷惑な存在で、
普段もからかってきたり嫌がらせばかりしてくる、
どう考えてもいい感情を抱く相手ではなかった。
なのに、どうして今、俺は動揺している?



「さ、よろしくお願いしますよ、飛翔様」
ホムラが声をかけるが、振り向くつもりは無かった。
他の教徒達も礼をしているようだ。
まあ、長くもったほうだったよ。
単に、ボクを犠牲にすれば不正義が復活するという情報を掴むのに
時間がかかっただけなんだろうけど。
どうせマコトには知らせていないのだろうから、ボクの命と不正義復活、
どっちが大切かなんて考えるまでもないだろう。

でも、残念だな。
ホントは少しくらい、人間らしい生活をさせてもらえるんじゃないかって期待していたのに。
力なんて要らないから、普通を体験したかった。
まあしょうがないか。ボクの下準備も良くなかったし。
ばいばい、みんな。

そして、言われたままに、生贄の言葉を唱える。
体が20年前と同じく熱くなっていくのがわかる。
さよなら、人間・風波飛翔。






…?
「生きて…る?」
知らない土地にボクはいた。
そして、まだボクは風波飛翔だった。

夢にも思わなかった。
これからボクの望みが叶おうとしているなんてことは。



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